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全編関西弁のコメディに!異色の『忠臣蔵』に込められた監督の意欲とは

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『忠臣蔵』の史実と定番を押さえながら自己流の解釈で“裏切る”

この映画の企画について喫茶店で初めて話し合った時は、自分が実際に監督するかどうか別にしてプロデューサー感覚で「いい企画だね」と言ったんだけど、いざ『忠臣蔵』をコメディに仕立てるとなると、どうしようかと困ってしまった(笑)。初稿の脚本を書き上げるまで半年掛かりましたね。

『忠臣蔵』の物語には、史実としての側面だけでなく、歌舞伎としての定番があります。なので、『忠臣蔵』を知っていて名場面を見たい人たちに対して“定番外し”はしたくないと思っていました。その上で、僕なりの解釈による裏切り方や驚かせ方を考えていくことは面白かった。僕は歴史ものを見ていて「お、こう来たか!」と驚かされるのが好きで、そうした仕掛けを作り手として行うことができて良かったです。

全編関西弁の『忠臣蔵』の主役に必要だった堤真一と岡村隆史

堤真一さんとは以前から一度お仕事をしたかった。最初に映画の企画をプロデューサーと話し合った時に「使う言葉は関西弁がいい」というアイデアが上がり、ネイティブで関西弁を話せる役者さんとして候補に残った堤さんに大石内蔵助役をお願いしたいという思いがありました。役が決まる前に脚本の初稿は出来上がっていたけど、堤さんがいてこそ成立するシーンも多々あったので、堤さんのカリスマとしての求心力は欲しかったですね。

そして堤さんありきでバランスを考えた時、内蔵助に寄り添う幼馴染の勘定方・矢頭長助を演じるのにピッタリだったのが岡村さんでした。岡村さんと僕は同い年で以前からシンパシーを感じていたので、一緒にお仕事をしてみたかったんです。また、僕は岡村さんが出演していた映画『岸和田少年愚連隊』が好きで、『忠臣蔵』を関西弁で作るならあの作品で彼が演じていた小鉄のようなキャラクターが欲しかったというのもあります。

撮影中に苦労したエピソード

御毒見役の大高源五(濱田岳)の衣装合わせを行った時、彼が茶人に憧れていることが一目瞭然になるよう、宗匠頭巾という千利休が身に着けていた頭巾をかぶらせたかったのですが、髷があると邪魔なんですよ。そこで「江戸時代の人でも頭巾をかぶりたかったら、ちょっとぐらい髷を後ろにずらすんじゃない?」と言って無理やりカツラを作らせたところ、濱田君を正面から撮ると波平さんみたいになって「ヤバイ!」と思いましたね(笑)。

あと、赤穂藩の経理係・大野九郎兵衛に扮する西川きよしさんが、戦担当の番方たちに「お前らに何が分かる!」と怒るシーンで、九郎兵衛の精神を一番受け継いでいるはずの矢頭長助に対して怒ってしまったんです。どうもご自身の役柄をよく把握されていなかったようで、度肝を抜かれましたね(笑)。岡村さんも後で「きよし師匠、私たちの役は仲間です」と注意していましたよ。

この映画でお気に入りのシーンはやっぱり、吉良邸討ち入り前の最後の打ち合わせとして行われるクライマックスの深川会議です。もう大丈夫だろうというところまで来たのに、まだ討ち入りのためのお金が掛かる…。

こうした読みの浅さや深さって何事にも通じる大切なことですよね。僕らも映画の予算がこれで十分と思っていても「ここにもまだお金が掛かるんだった!」という経験があるので、このシーンの仕上がりには自信があります。あと、今までの『忠臣蔵』と違って内蔵助たちの敵が身内というのも妙味ですね。

特に順番をつけたわけではありませんが、まずはベースとなる『忠臣蔵』を知っている人に向けて、そして『忠臣蔵』のことも何も知らない人に向けても作りました。『忠臣蔵』に詳しくない人がこの映画を見て、こっちの話が本物と思いつつ、これまでの定説とされる『忠臣蔵』作品を見直すようになってくれたら嬉しいですね。

そして、誰しも人生において大石内蔵助になる瞬間ってあるはず。もし自分が内蔵助だったら、吉良邸討ち入りまでにかけてどんな気持ちになるか?どんなことが起きるのか?と考えられる面白さがこの映画にはあります。内蔵助以外にもいろんなキャラクターが登場するので「自分はこの人物に近いかな」というキャラクターが見つかるはず。ちゃんと討ち入りできるかどうか、ぜひ大石内蔵助と仲間たちを応援してほしいですね。

(監督 中村義洋)

movie info

作品名
『決算!忠臣蔵』(2019年)
監督
中村義洋
出演
堤真一/岡村隆史
公式サイト
https://chushingura-movie.jp/
2019年11月22日(金)ロードショー

©2019「決算!忠臣蔵」製作委員会

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