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長編映画初監督のオダギリジョーと主演の柄本明が振り返る“日本映画への挑戦”

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柄本明は大切な作品を預けられるほど尊敬できる俳優

オダギリ「僕は脚本を書くことが大好きで、日々ネタを集めては時間がある時に作品という形にしています。その中の1つが『ある船頭の話』。撮影監督のクリストファー・ドイルと『何か映画を作ろうか』と話が盛り上がって、今回の作品の脚本に選びました」

柄本「脚本を読んだ後は『オダギリ監督はこんなことを考えているんだ』という感想が浮かびました。どこか普遍的な話であり、難しくもあり懐かしい気もする。並々ならぬ気持ちで書いた作品なんだな、と感じましたね。さらに思ったのは、なぜ監督が僕を主役に選んだのか(笑)」

オダギリ「いやいや! キャスティングにあたって『同業者として尊敬できる俳優であるかどうか』を考えた時に、柄本さんは自分の大切な作品を預けられるほど尊敬できる方だったんです。実は脚本を書く段階から挑戦したいことがいくつかありました。その1つは、普通ならいろんな人のいろんなシーンを同時進行で進めることで飽きさせないよう構成するところを、あえて柄本さんが演じる船頭のトイチを出ずっぱりにしたこと。また、この作品を通じて海外の方にも日本の景色を見てもらいたかったので、日本の原風景といえる景色を探し回りました」

柄本「その中でも特に過酷な場所を選んだよね。しかも炎天下の河原で船でしょ…僕だけじゃなくスタッフにとっても、本当に大変な撮影でしたよ(笑)。僕なんか“にわか船頭”だからちょっと川の流れが変わったら船が流されちゃうし、撮影というより挌闘でしたね」

安易な答えを求めない、時代と逆行した日本映画

オダギリ「僕はこの作品を通じて何かしらの答えを渡したいわけではなく、見る方が好きなように取っていただいて構わないと思っています。主人公のトイチは自分が演じるつもりで僕自身を当て書きしたもの。ただの“いい人間”や“悪い人間”を描くのは難しいので、僕の中にある部分をトイチに込めながら、トイチがどういう人間なのか僕にも分からない部分を残しながら書きました」

柄本「このキャラクターがどういう人間なのか?と考えてもしょうがない。今の社会は『いい人間だ』『悪い人間だ』と明確に分からなきゃいけないよう強要しているような気がするけど、その点で言うと、この作品は現在の日本映画と逆行していると思います。あえてこの時代にそうしたことに挑戦する勇気を、お客さんにも嗅ぎつけていただきたいですね(笑)」

オダギリ「僕が考える監督の信念とは『何に挑戦するか』ということ。僕が作る意味を持たない作品なら誰かプロの監督が撮ればいいわけだし、逆に僕のオリジナリティだったり監督を務める必要性がなければ撮りたくない。だからこそ、俳優である僕が監督を務めるからには、無難なものを作ってはいけない。それがプロの監督に対して失礼がないよう果たすべき義理だと思います」

柄本「僕にとっての俳優の信念は、時間になったら撮影場所に行って、脚本に書いてあるセリフを言って、終わったら帰ること(笑)。こんなふうに言うとどうでもいいことのように聞こえるかもしれないけど、投げやりでも何でもない。人にもよることだけど、僕にとってそれはとても難しいことです。今回の撮影は撮っても撮っても終わらないような感覚になったけど、それこそが“映画の時間”なんですよね」

(俳優 柄本明/映画監督 オダギリジョー)

movie info

作品名
『ある船頭の話』(2019年)
監督
オダギリジョー
出演
柄本明/村上虹郎
公式サイト
http://aru-sendou.jp/
2019年9月13日(金)ロードショー

©2019「ある船頭の話」製作委員会

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