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現代のカメレオン俳優クリスチャン・ベールが、西部の歴史に残る陸軍大尉に──伝説の英雄の葛藤を掘り下げる

#REVIEW
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宿敵を許せるか? 簡単に善悪を下せない深みのあるドラマ

僕が演じたジョー・ブロッカー大尉は、生涯を戦争と共に生きてきたような人間。南北戦争の真っただ中に育ち、南北戦争とインディアン戦争で何年も戦い、それもようやく終わろうとしている。

最西端の土地で何十年も過ごしたジョーは、その間に家族・友人・多くの戦友を失い、彼自身も何度も死にかけたけど、数えきれないほどのネイティブ・アメリカンを殺してきた。そうした彼にとっての“マニフェスト・デスティニー(明白な使命)”は、“大虐殺”の婉曲表現でもあるんだ。

また、彼はシャイアン族の首長であるイエロー・ホークのことを嫌っていた。それは友人たちが彼らに殺される瞬間を目撃していたから。でもこの作品は典型的な西部劇とは違って、簡単に善悪をつけられるようなものではないよ。ブロッカーはイエロー・ホークのことを嫌うと同時に尊敬もしていたし、逆の立場だったら彼と同じことをしていただろうね。

そうした憎しみが消えない中、ワシントンDCで政治の風向きが変化してPR活動が必要になり、ブロッカーは司令官からある命令をされる。その内容は、年金の喪失や軍法会議と引き換えに、イエロー・ホークを聖なる故郷へ送り届けるというもの。敵対する2人がどのようにして共に旅をするのか──それが物語の根幹になっていくんだ。

引退直前のブロッカーは、最終的に憎しみを消すことができるか、そして罪をどう克服するかという葛藤に迫られる。だって護送任務を遂行することは、戦友の死に目をつむってイエロー・ホークを許すことになるわけだから。

どうすれば危険にさらされず自分の存在意義を見出し、一般の生活の中に溶け込むことができるのか。また、たとえ今までのように軍人として不可欠な存在でなくなったとしても、自分の存在意義を見出し今の状況にどのように向き合っていくのか? そこがこの作品の見どころになっているよ。

過酷な旅を再現するための撮影もまた過酷

今回の役作りにあたってはウンデット・ニーの虐殺(米軍の第7騎兵隊が行った民族浄化)に関する文献を読み、ブロッカーの若かりし頃の人物像、つまり彼の原点も知りたかったので、ケン・バーンズのドキュメンタリー『南北戦争』を繰り返し見たんだ。もちろんスコット・クーパー監督とも何度も話し合いを重ねたよ。

クーパー監督は今、アメリカという国を再発見するために何かを探っているように見えるね。彼が作る映画は実にアメリカらしくてとても興味深いし、何より一緒に仕事がしやすいんだ。例えば、リハーサルを行わずストラップ付きのカメラで撮影したり、僕たちにとって最も良い方法だった。彼と一緒に創作した作品にはお互い誇りを感じているよ。

とはいえ、撮影中は大変なことも多々あったよ。時々、馬が後ろ脚を蹴り上げて背中から倒れることがあり、馬に乗っている者が飛び降りなければいけないんだから。僕とクーパー監督と撮影監督の高柳雅暢が現場にいた時に、雷が落ちて『今すぐ逃げろ!』と言われたんだけど、僕たちは『あんたたちが逃げろ』と言って素早くシーンの撮影に取りかかったよ。

なぜかと言うと、合成ではない本物の雷が背景にあることが嬉しかったからさ。そういうアクシデントがあるたびに撮影を中断しなければならないんだけど、それは物語の人間たちも実際に経験したことのはず。だからロケ地での撮影は作品に大きな影響を与えたよ。物語の時系列通りに撮影したことも、作品にとって非常に良いことだったね。

(俳優 クリスチャン・ベール)

movie info

作品名
『荒野の誓い』(2017年)
監督
スコット・クーパー
出演
クリスチャン・ベール/ロザムンド・パイク
公式サイト
http://kouyanochikai.com/
2019年9月6日(金)ロードショー

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