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若きオスカー女優アリシア・ヴィキャンデルが惚れ込んだ一流スタッフと珠玉のストーリー──その真髄を熱く語る

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憧れの巨匠ヴィム・ヴェンダースに寄せる絶大な信頼

この作品の主人公は、ジェームズとダニーというカップルよ。生物学者のダニーは、生命の起源に関する自分の学説を証明するため大西洋の海底を探査するという、大事な調査を控えている。一方、水道工事を装いアフリカで任務を遂行していたMI-6諜報員ジェームズは、ソマリアの過激派に人質に取られてしまう。

この2人の物語が同時進行しつつ、ノルマンディーの海岸で恋に落ちた彼らの出会いの物語が描かれるのよ。物語のテーマは宗教、政治、科学、そしてもちろん愛ね。

昔ヴィム・ヴェンダース監督の作品を見たことがあって、映画に夢中になるきっかけの1つになったの。だから今回の作品は私にとって願ってもないチャンスだった。世界屈指の監督で、しかもずっと憧れていた人と仕事ができて感激しているわ。

ヴェンダース監督は常に限界への挑戦を続けていて、物語と映像の両面で新たな手法を模索し続けているの。無理のない自然なストーリーだけど未知の領域に踏み込んでいき、しかもそのすべてに説得力がある。そんな監督を信頼しているからこそ、思いきった挑戦が可能になるの。安心して演技ができる、本当に楽しい仕事だったわ。

相手役のジェームズ・マカヴォイの演技を始めて見たのは『つぐない』。彼の出演作はほぼ見ているけど、素晴らしい俳優よね。『つぐない』のジョー・ライト監督と仕事をしたことがあって、彼もジェームズを絶賛していたわ。

実はジェームズとはこの作品の前にパーティー会場などで何度か会ったことがあったの。本当に面白い人で、よく笑わせるのよ。だから今回の撮影でもリラックスできた。壮大なスケールで繰り広げられる複雑なラブストーリーだから、彼が相手役で本当によかったわ。

原作と読み比べることで実感した脚本の素晴らしさ

今回は脚本を呼んでから原作も読んだの。映画とのアプローチの違いに気づくことができて、とても興味深かったわ。エリン・ディグナムの脚本は、哲学的な世界を見事に表現し、時間や空間を自由に移動したり、かなり大胆に書かれていて大好き。もちろんJ・M・レッジャードの原作も同じくらい素晴らしかったわ。

原作はまるで夢のような別世界に連れて行かれるような感じ。様々なアイデアと出会い、人々の経験やビジョン、そして真実の追究が見事に描かれているの。それをエリンはうまく吸収していたわ。原作のフィーリングを生かしつつ脚本を作っていて、物語のつながりも分かりやすく、本当に驚くべき仕事ぶりね。

この脚本は私にとって特別なもの。新しい世界の扉を開いてくれたし、ラブストーリーとしても素晴らしい。知的な挑戦を忘れずにいることを教えてくれたわ。そして運命の出会いについても描かれているけど、ただ誰かと恋に落ちるという話ではなく、相手の信念を理解し、すべてを含めて愛することを教えてくれる作品。見た後に誰かと語り合いたくなるはずよ。

(女優 アリシア・ヴィキャンデル)

movie info

作品名
『世界の涯ての鼓動』(2017年)
監督
ヴィム・ヴェンダース
出演
ジェームズ・マカヴォイ/アリシア・ヴィキャンデル
公式サイト
http://kodou-movie.jp/
2019年8月2日(金)ロードショー

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