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遠い異国の地で新しい自分を探す旅──ウズベキスタンを舞台としたオリジナル物語の創作秘話を黒沢清監督が自ら語る

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監督の実体験から膨らんでいった物語

この作品に携わったのは知り合いのプロデューサーから「ウズベキスタンで何か映画を作らないか」と持ちかけられたのがきっかけで、元々一度は行ってみたい国だったので監督を引き受けることにしました。

とはいえウズベキスタンの深い事情に立ち入った物語は作れないだろうから、まずは「旅番組のクルーが主人公」という設定を作ることで、私が海外で体験したエピソードを使いながら脚本を組み上げていきました。

例えば、乗るバスの方向を間違えた瞬間に「人生が変わるのでは…」と思うぐらい緊張したり、一生懸命地図を見ている時に隣の人が教えようと話しかけてきたら「この人を信じていいのか」となおさらパニックになるとか。

言葉が通じない初めての国で、すべての些細な出来事が一大事になっていくというエピソードの数々は、すべて私自身の経験が活かされています。

ヒロインの経験をダイレクトに伝える一人称形式へのこだわり

旅番組のレポーターであるヒロインだけをカメラで追いかけ、彼女が知らないところで起きている出来事は一切描写しないという一人称形式を、作品づくりの“枷”というか“手がかり”にしました。

そうすることによって、彼女自身が経験したことをそのままダイレクトに観客に伝えることができるだろうと思ったのです。描かれているエピソードはよく考えると些細な出来事ばかりですが、主観的な描写を通じて「彼女にとっては一大事」ということを理解してもらえるだろうと思い、一人称形式にこだわりました。

ウズベキスタンでの撮影は、特に大きなトラブルに巻き込まれることはありませんでした。例えば、巨大なバザールで撮影するシーンも、撮影OKな場所とNGな場所があるらしいのに詳しく教えてもらえないまま当日を迎えたのですが、結局は担当者自身もどの場所がNGなのかよく分からず、最終的にはそのまま全部撮影してしまいました。

そうしてウズベキスタンの様々な場所や人を撮っていくうちに、オリジナルの物語を完成させることができるだろうという希望を持つことができたのは、自分なりのチャレンジだったと言えるでしょう。

ウズベキスタンの方がこの作品を見たらどう思うか分かりませんが、日本人からするとすべてが珍しい映像風景になっているので、この作品を作る価値や見ていただく保証になったのではないかと思います。

(映画監督 黒沢清)

movie info

作品名
『旅のおわり世界のはじまり』(2019年)
監督
黒沢清
出演
前田敦子/加瀬亮
公式サイト
https://tabisekamovie.com/
2019年6月14日(金)ロードショー

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