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鬼教師と余命わずかな元教え子が絆を育む感動小説は、いかに映画へ昇華したのか?その裏側を兼重淳監督が自ら語る

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“先生が生徒から教えられる物語”に人間味を宿した役者たち

物語のモチーフとなる野球を描くにあたって“嘘”をつきたくなかったので、甲子園出場経験者だったり社会人野球や独立リーグでプレーしたことのある方たちに声を掛けてチームを作りました。

物語の大きなテーマは、高校野球部で生徒を育てていたつもりで実は“選ぶ”ことしかできていなかった“赤鬼先生”が、育てることの意味を理解し、余命わずかな元教え子“ゴルゴ”の思いを汲んで一歩踏み出す──つまり教師が生徒に教えられるところにあります。

赤鬼先生役は、いい意味で生活感のある俳優である堤真一さんにお願いしました。原作小説のイメージだとこの教師は生徒に対してもう少しドライだと思っていたのですが、演じていただくうちに人間味があふれ出し、実は生徒のことをとてもよく考えていることが伝わる人物に仕上がりました。

今回のように物語が死へ向かっていく作品というのは、演技に振り幅がない人がのめり込んで演じるとクサくなりがちなのですが、堤さんとゴルゴ役の柳楽優弥さんは“抜くところは抜く”さじ加減が絶妙。おかげで息が詰まりすぎない作品になっていると思います。

映画作りで“一番大切にしたこと”と“幸せに感じたこと”

この作品で一番大切にしたのは“生活感”。赤鬼先生やゴルゴの家族模様を交えることで、「生活の中で思いが届く」「人々の思いを受けて、一歩踏み出す勇気を持つ」ということが伝わるよう描きたかったのです。

撮影以外でも、行列のできるラーメン店で列に並ぶ人や駅のホームに立っている人を観察して、映画のネタ探しを行っていました。「あ、人をイラつかせるのってこういうことなんだな」とか。

映画監督をやっていて幸せに感じるのは、撮影現場の芝居などで化学反応が起きる瞬間ですね。今回の作品で言うと、柳楽さんの自暴自棄に陥った状態や、堤さんが野球部員に頼み込む芝居。

また、赤鬼先生のストップモーションで止まるラストシーンを撮影した日は、このシーンの本番だけ晴れ間が出たんですよ。「ああ、映画の神様っているんだな」と嬉しく思いましたね。

(映画監督 兼重淳)

movie info

作品名
『泣くな赤鬼』(2019年)
監督
兼重淳
出演
堤真一/柳楽優弥
公式サイト
https://akaoni-movie.jp/
2019年6月14日(金)ロードショー

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