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オードリー・ヘプバーンを見出した伝説の小説家──現代女性の先駆けとなったコレットの魅力をフランス文学者が語る

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愛と自由を貫いた作家コレットの半生を描いた物語

この映画は、19世紀後半に生まれたフランス人女性作家シドニー=ガブリエル・コレットの、若い頃から作家になるまでを描いた物語です。

当時はまだ因習の強い時代でありながら、コレットはそういうことを気にしない自由で自立的な女性だったので、現代人が見ても共感できるのではないでしょうか。

20歳で結婚したコレットは夫である作家のゴーストライターを務め、やがて夫の才能を超えるようになり離婚。その後、自活するためストリッパーのように官能的なパントマイムを演じて大スキャンダルを起こすのですが、彼女はまったく気にせず自分の好きな道を歩んでいきました。

彼女にはセクシャリティへの偏見が皆無でしたが、それでいて自ら執筆する文章にはとても節度があり、決していかがわしさを売りにしていたわけではないのです。

一方でコレットの小説は、内容こそ大衆性があったものの文体やイメージが奔放すぎて、原文で読むとかなり読みづらい。

そのためなかなか評価されなかったのですが、同時代の作家たちは「すごい才能だ!」と感嘆していました。彼女が広く評価されるようになったのは、ここ20年ぐらいでしょうかね。

慣習やジェンダーにとらわれずに時代を作り上げた女性

キーラ・ナイトレイはもともと意志の強そうな顔をしていることもあり、自我を打ち出す女性を演じるのが上手い女優。コレットはまさにハマリ役で、まるでコレットがキーラに乗り移っているようです。おそらくキーラ自身もコレットに共感する部分が多かったのでしょうね。

また、この映画でも描かれていますがコレットにはバイセクシャルな傾向があり、さらに夫もバイセクシャルでそうした性的嗜好を推奨したそうです。フランスではこの時代から2度の戦争に渡ってバイセクシャリティの傾向が続き、ちょうどその風潮に乗るような形でコレットは作品を発表していきました。

ひたすら自由な生き方を貫き、そして作品と生き方が一致した最初の女性作家と言えるのではないでしょうか。

極論すると、ベル・エポックと呼ばれるこの時代は「街を一人で歩いている女性がアートに描かれていたとしたら、その女性は娼婦だ」と言われるほど制約の厳しい社会。逆に、この時代において女性の職業は娼婦しかなかったわけです。

そんな中でコレットが誰にも頼らず自立を決意していく過程が、この映画のポイントと言えるでしょう。

(フランス文学者 鹿島茂)

movie info

作品名
『コレット』(2018年)
監督
ワッシュ・ウェストモアランド
出演
キーラ・ナイトレイ/ドミニク・ウェスト
公式サイト
https://colette-movie.jp/
2019年5月17日(金)ロードショー

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