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壇蜜が「訳ありカラダの数奇な運命」をテーマにお気に入り映画をセレクト

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私が選んだお気に入り映画のテーマは「訳ありカラダの数奇な運命」。普通の人とは決定的に違う特性や本能を持った、自由に生きられない人たち。彼らの生きづらさや美しさ、また救いの手を差し伸べられた時に抱く喜びを、見る人たちにも深く感じ取っていただきたいと思います。

人間に恋をしてはならない人魚姉妹の悲運『ゆれる人魚』

この作品の主人公となる人魚姉妹は、本当に何の前置きもなく「どうも人魚です」とナイトクラブに登場します。お客も「人形だ、ヒュー」みたいなノリで盛り上がっちゃって(笑)。人魚がいるかいないかという前提が存在しないんですよ。

実は人魚って人を喰らう肉食動物なのですが、人魚姉妹の姉がバックバンドの人間男性に恋をしてしまい、「人間との恋なんてやめた方がいい」と反対する妹と「人間になりたい」と望む姉が対立していきます。生々しさと怖さがありながら、ファンタジーらしい設定も随所で見られるのが面白くて、例えば人魚姉妹を部屋に招いた人間が「なんか生臭いな」って言うシーンが大好きなんですよ。あ、やっぱりそういう匂いがするんだって(笑)。

エンディングには「人魚姫」のお話を知っているとより哀しくなる心情が投影されているのですが、主人公の人魚が姉妹という点が、2人の数奇な運命の決め手になっている気がします。

ずっと2人で生きてきて“罪”を分け合う比重もフィフティ・フィフティだったのが、少しずつその比重が変わっていき、本能のまま人間に恋をした姉の方が罪の濃度は濃くなっていく──。そんな中で2人が“もはや運命を共にできなくなった”と分かった瞬間に起きる出来事が切なすぎますね。

亡き娘を愛するがゆえの悲劇『ウェイク・ウッド 〜蘇りの森〜』

この作品は、娘を亡くして失意のどん底にあった夫婦が「3日間だけ死者を蘇らせられる」というウェイク・ウッドの伝説を頼りに引っ越してきて、町の呪術師たちにお願いしようとするストーリーです。

私はこうしたタイプの作品を“反魂系”と呼んでいるのですが、必ずどこかに落とし穴が存在するんですよ。蘇った人に理性がなかったり、人を食べるようになってしまうとか…。そうした反魂系ゆかりの困ったポイントがこの娘にも存在するので、娘がどうなってしまうのか、夫婦がどうなってしまうのか注目してください。

この主人公の一家は、父親がイケメン獣医で母親も娘もキレイという理想の家族だったのに、1つの悲劇とたった1回の嘘でおかしな方向へ道を踏み外していきます。人間というのは“大切な人を蘇らせられる”という情報を知ってしまうと、あきらめきれないもの。

取り返しのつかない嘘をついてしまうこの夫婦も、愛する娘に生き返ってほしいという素直な願いを叶えるには、どうしても悪人にならざるをえなかったわけです。

また、ラストシーンの後には“その後”を描くアナザーストーリーが続くのですが、これがビックリの展開! エンドロールまでの約2分があっという間なので、一時停止しながらの鑑賞をオススメします。

異質だからこそ惹かれ合った少年少女『ぼくのエリ 200歳の少女』

少年少女の無邪気なラブストーリーがほんのりと入っていながら、その背景はとても残酷という、幾層にも感情が重なっている物語です。

主人公の少年が恋する200歳の少女エリは、おそらくこれからもずっと少女の姿のままで、死ねないんだろうな…と思わせる描写が随所に見られる中に、少年の温かい心が残酷なぐらい染みてきます。そうした2人の心情を汲み取った上で、少女が冬の夜道で本能のまま人を襲う残虐なシーンを見ると、すごく哀しいんですよ。

一方の少年は学校に馴染めず同級生にイジめられ、その描写が可哀想に感じられるのですが、そんな彼の優しい感性はエリの前だと決して汚されない。つまり彼がエリに希望を与える一方、逆にエリによって照らされているということ。たとえ学校に居場所がなくても、エリという新しい居場所を作れていることに救いを感じさせてくれます。

実は私にも学校に馴染めなかった経験があります。小さい時は学校が社会のすべてと思いがちですが、エリと出会うことによって少年が“学校=世界ではない”と疑うようになり、それも彼にとって救いになったことでしょう。

異質だからこそ分かり合えた少年と少女。お互いに自分が異質なことに対してネガティブな気持ちを抱えていたからこそ、2人揃うことによって「それでも生きていけるんじゃないかな」という希望が生まれたのではないでしょうか。

PROGRAM INFO

番組名
マイチョイス:壇蜜
放送映画
『ぼくのエリ 200歳の少女』(2008年)
スターチャンネル1 3/16(土)ほか

profile

壇蜜DAN MITSU

主な出演

『精霊の守り人』(NHK)

『サンデージャポン』(TBS)など

『BRAVE STORM』(映画)

『関ヶ原』(映画)その他多数出演

主な著書

『壇蜜日記』(文春文庫

『たべたいの』(新潮社)

『壇蜜ダイアリー』(文藝春秋)など多数

『ぼくのエリ200歳の少女』© EFTI_Hoyte van Hoytema

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