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女王陛下の孤独な晩年を輝かせたのは、一人のインド人従者だった──身分と国境を越えた奇跡の絆を映画化

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名優ジュディ・デンチが2度目のヴィクトリア女王を熱演

この物語は、ヴィクトリア女王即位50周年の式典で統治国のインドから金貨を贈呈する役目を託された、インド人青年アブドゥルがイギリスに訪れることから始まります。アブドゥルのことを気に入った女王はムンシ(教師)という称号を与え、彼を通じてインドの文化・宗教・生活を教わるうちに絆を深めていくのです。

ヴィクトリア女王役はジュディ・デンチですが、彼女がヴィクトリア女王を演じるのは今回が2度目。お茶目ないたずらっ子のように見える一方、目線一つで女王としての威厳を表現することができ、そういう凛とした姿が女王役にピッタリ。デンチ本人も2度目のヴィクトリア女王を乗り気で演じたそうです。

女王陛下が登場する時代ものというと、けっこう荘厳な物語を想像する人が多いと思います。実際、そういう重厚な人間ドラマとしての素晴らしさがある作品ですが、宮廷での生活の描き方はとてもコミカル。シーン一つひとつが分かりやすく、魅力的に描かれています。

例えば、金貨を贈呈する役目を託されたアブドゥルが「女王陛下と目を合わせてはならない」と言われていたのに、つい興味が勝って女王陛下の目を見てしまうシーン。そして目が合った瞬間、女王陛下はアブドゥルをギロッと一瞥してたじろがせるわけですが、その瞳の奥はクリクリしてどこか可愛らしい。

おそらく女王陛下はその時点で、この青年は他の人とはどこか違うと見抜いたんじゃないかな──というふうに説明描写を挟むことなく想像をかき立たせるテンポの良さが、この作品の魅力の1つです。

(映画コメンテイター 八雲ふみね)

孤独な女王の晩年を輝かせた真実の物語

ヴィクトリア女王といえば、63年7ヵ月というイギリス史上最も長く即位した女王。18歳から女王を務めていて、公務にはウンザリしているわけです。

彼女の即位50周年式典の食事会でも、女王が料理を食べれば他の出席者の料理も下げられる、つまり早く公務を終わらせられるので、さっさと食事を済ませてしまいます。その式典で記念金貨を贈呈するために出席したインド人青年アブドゥルのことをヴィクトリア女王が見初め、そこから2人の物語が紡がれていきます。

最初は女王が青年に恋したのかな?と思えますが、実はそうではなく、息子のような感情を抱いたのです。ヴィクトリア女王は9人の子供を産みましたが、若くして他界した子もいて、家族の縁が薄い人でした。そんな思いの中にアブドゥルが現れたことで、2人の関係が育まれていきます。

ジュディ・デンチの演技を通してヴィクトリア女王を見ていると、老いることは辛いけど、人との出会いによって老いた細胞が活性化するかもしれない──いわば老いの魅力が伝わってきますよ。

(映画ライター 清藤秀人)

movie info

作品名
『ヴィクトリア女王 最期の秘密』(2017年)
監督
スティーヴン・フリアーズ
出演
ジュディ・デンチ/アリ・ファザール
公式サイト
http://www.victoria-abdul.jp/
2019年1月25日(金)ロードショー

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