film talkfilm
talk

“嘘”によって父の暴力から母を守ろうとする少年──緊張感が極限まで張り詰めていく衝撃のサスペンスドラマ

#REVIEW
  1. TOP
  2. FILM TALK

フランス映画の常識を覆す衝撃のラスト

この物語はいたってシンプルで、主要な登場人物は一組の夫婦と息子の3人だけ。夫婦は離婚調停で息子ジュリアンの親権を巡って争い、裁判所は夫婦両方に親権があると判断を下します。

本来なら母親が親権を持った方がジュリアンにとって幸せな状況ではありながら、父親も自分なりにジュリアンに愛情を示していて「俺は何も悪くない」と主張。でも、物語が進むにつれて徐々に父親の狂気が見えてきて、その狂気が最後には爆発してしまうという恐怖のストーリーになっています。

フランス映画というのはどうしても「何も起こらないないまま話が終わっていく」というパターンがイメージとしてありましたが、最近は『最強のふたり』などのように起承転結の明確な作品が増えている気がします。

この作品もストーリーがしっかりしていますが、じゃあエンタメ作品かというとそうではなく、社会問題を切り取ったアート系の映画です。夫婦の離婚やそれに伴う子供の親権争いというのは、どの国でも共通する問題。日本においても国際結婚の夫婦が離婚したらどちらに親権が属するかということは、かなりの国際的な問題になっています。

この作品はフランス国内の物語ですが、家庭内暴力であったり、部外者である裁判所が親としての適正を判断することに問題はないのか、という深いところまで斬り込んでいます。

商業的にウケるように作られていながら、内容はとてもパーソナル。いわゆるアート映画の枠に入ってもおかしくありませんが、最後の15分間がまさにホラー映画のようなノリ。こんなフランス映画は見たことない!と驚かされます。

(映画ライター よしひろまさみち)

トーマス・ジオリアが魅せる“声なき演技”

子供の親権を争う裁判など社会問題が含まれた作品ですが、DVを行う夫の怖さが大きな見どころとなっています。暴力から逃れることがいかに大変か、というテーマを扱っていて、その描き方がとても上手い!

音楽をほとんど使わず、ドアの音やアパート内の足音などの“物音”によって、モンスター=夫が迫ってくる恐怖を繊細に魅せるところがすごいですね。

夫婦の共同親権が認められたことで、息子ジュリアンは嫌でも隔週ごとに父親に会わなければいけなくなります。母親に暴力が振るわれないよう、ジュリアンは迎えに来た父親の車に乗るのですが、父親の舌打ちやハンドを叩く音におびえ、また自分たちの新しい住所を聞き出そうとするしつこさに抵抗しながら、いつ父親が暴発しないかビクビクする…。そんな緊張感に助手席という閉塞空間で黙って耐える姿が痛ましく、見ている方も息ができなくなり目が離せません。

健気なジュリアンを演じたトーマス・ジオリアは、この作品が映画初出演。大人が争い合うシーンでは言葉をしゃべらないのですが、「怖い」とか「ここで僕がお母さんを守らないと」といった子供なりの声なき声を、台詞がなくても表情と体だけで発散しています。世界にまた一人、素晴らしい子役を見つけられたな!と思いました。

(映画ライター 金子裕子)

movie info

作品名
『ジュリアン』(2017年)
監督
グザヴィエ・ルグラン
出演
ドゥニ・メノーシェ/レア・ドリュッケール
公式サイト
https://julien-movie.com/
2019年1月25日(金)ロードショー

NEW ARRIVAL