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国民の英雄から一転、大統領暗殺容疑者に…伊坂幸太郎のベストセラー小説を韓国で映画化
ヒーローから悪者に堕ちる様に魅せられる
この作品は、伊坂幸太郎原作で堺雅人が主演を務めた『ゴールデンスランバー』の韓国版リメイクです。主人公ゴヌは強盗されそうになったアイドルを偶然救い、TVでも取り上げられて国民的ヒーローに。その後、彼が昔の親友と再会した際に次期大統領候補が暗殺されてしまい、その親友に「暗殺したのはお前だ」と言われるのです。
これは原作が持つ力でもありますが、国民的ヒーローという絶頂の立場から次期大統領候補暗殺者、いわば悪者へと堕ちていくストーリーに惹きつけられました。そしてゴヌが国家的な陰謀に巻き込まれることで「国家・警察・主人公」という三つ巴の構図が生まれ、ストーリーにさらなる厚みを加えています。
今回はソウル市内を封鎖してロケを行ったそうですが、日本ではなかなかできないことですよね。ある意味、韓国という国を上げた厚い支援が感じられます。私は韓国に2〜30回は訪れているので、こんな所でロケできて爆破までしたんだ!とグッとくるものがありました。
(映画パーソナリティー コトブキツカサ)
公権力に立ち向かうカン・ドンウォンの姿に注目
実はパク・クネ政権において、自分たちに都合の悪いことを報告させブラックリストを作成していたそうです。その結果、政府に難癖をつけるような作品は映画化できなかったのですが、こうした実状が外に知られることはありませんでした。そんな背景と今回の主演を務めたカン・ドンウォンは、根深い関係にあるのではないかと思っています。
カン・ドンウォンは、1980年代に起きたある事件をテーマとする企画が進まない時に自ら主演を立候補し、映画化を実現させたことがあります。そんな経緯もあって、カン・ドンウォンはパク・クネ政権のブラックリストのトップに名を連ねていたそうです。
公権力が正しくないことを行っている時に“これが正しいことだ”と正義のために走る主人公の姿は、政権の意に反した作品に積極的に参加したカン・ドンウォンと重なるものがあります。おそらくカン・ドンウォンも、作品のメッセージ性に共感したからこそ出演したはずなので、そうした背景を知った上で見ていただきたいです。
ちなみにこの映画のタイトルは、ビートルズが最後から2番目に発表したアルバム『アビー・ロード』で終盤のメドレーを飾る楽曲が由来で、作中でもカバー曲として登場します。当時のビートルズは解散直前でメンバーがバラバラに活動し曲作りも別々に行っていて、そんなメンバーをなんとかつなぎとめたいと思ったポール・マッカートニーは、バラバラの曲を1つのメドレーに仕立て上げることで“ビートルズの曲”にしようとしたという裏話があります。
この映画は、かつての仲間たちがもう一度集まって何かをしようというストーリーが展開しますが、そこにはこうした曲の想いが込められているわけです。実はこうした関連性は伊坂幸太郎の原作小説には記述されていることで、同曲の背景を知ってから見るとグッとくるでしょう。また“仲間”たちの関係性において韓国版オリジナルの設定が描かれていて、効果的な見どころになっていますよ。
(映画評論家 松崎健夫)
movie info
- 作品名
- 『ゴールデンスランバー』(2018年)
- 監督
- ノ・ドンソク
- 出演
- カン・ドンウォン/キム・ウィソン
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