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伝説的ディーバも、愛を求める一人の女性だった…ホイットニー・ヒューストンの実像に迫るドキュメンタリー

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夫婦にしか分からない真実

この作品は、『ボディガード』の主題歌を歌っていまだにビルボードチャート1位の記録を持っているホイットニー・ヒューストンのドキュメンタリーです。ホイットニーの人生を時代に沿って追いながら、親族だけでなく音楽関係者など様々な人たちの証言で構成しているのが特徴です。

監督のケヴィン・マクドナルドは劇映画も手がけていますがドキュメンタリー出身の人で、あえて明確な結末や答えを提示せず観客自身に考えてもらうという作風を好んでいます。今回も、ホイットニーについての証言をいろいろな人に聞く中で「この人とこの人で言ってることが違う」という矛盾が生じてもそのまま提示し、どちらの証言が正しいとは描いていません。

そうした複数の証言を組み合わせてホイットニー像を作り出し「これが正解ではないか」と観客に考えさせるわけです。誰もが歌ぐらいは知っているホイットニーの人生を改めて見直すと、実は一般的なイメージとは違うんじゃないのか?ということが見えてきて面白いですね。

その中でも特に注目してほしいポイントは、ホイットニーが人気絶頂期に結婚したボビー・ブラウンとの関係です。ホイットニーの方が人気・実力共に上だと思われることにボビーがすねたり、家庭内暴力や浮気をするダメ夫という噂は当時から流れていました。

ところが、監督が「ホイットニーの死因は麻薬では?」と尋ねると、「これは彼女についてのインタビューだから麻薬のことには答えない」とホイットニーの負の面について一切語らない姿勢を貫いていて、ボビーが彼女を愛していたんだなと確信できます。

さらにホイットニーの方も、ボビーに成功してほしくて悪口も言わず手助けしていた献身ぶりが描かれています。普通に考えると浮気されたり暴力されたり大変そうだけど、やはり夫婦にしか分からないことがある。私たちは彼らの外面だけで判断していたけど、本当にそれでいいのか──。映画の中で描かれる出来事を見て観客自身が判断するという本作のスタンスは、こうしたところにも現れています。

(映画評論家 松崎健夫)

メディアが作り上げた誤った真実に気づく

私たちの知らなかったホイットニー・ヒューストンの素顔が如実にスクリーンに映し出され、「こんな人生を送っていたんだ!」という知らないことばかり。華々しくデビューした裏側、ワールドツアーの様子、幼少期の親友との関係…。私はまさにホイットニー世代だったのですが、彼女について知っているつもりだったことが実はメディアが作り上げた誤った真実だということがよく分かる映画です。

ホイットニーについては転落していった後半期のイメージからどこか見下した気持ちを抱いていたのですが、それが180度変わりました。厳しい状況の中で愛を求めて闘っていた人なんだな、と今はリスペクトに似た気持ちを抱いています。

また、家族のみならず近所のおばさんまで一族郎党の面倒を私が見なければ!と、ホイットニーが小さい肩にいろいろなものを背負っていたことも印象に残りました。娘のナニー、少女時代のバイト仲間、ヘアメイクさん…すべての人の生活の面倒を見ていたなんて私たちは知りもしませんよね。

ホイットニーはこうした周囲の人たちをただのスタッフではなく、心を許せる家族として扱っていたので、彼女を嫌って去った人はいないと思います。その優しさにつけ込んで父親にお金を横領されたことがありましたが、それでも彼女は責めたりしない──本当に心の広い女性だったんでしょうね。

ちなみに、ホイットニーはマイケル・ジャクソンとも仲が良く、ホイットニーがバッシングにさらされた時も何も言わず一緒に過ごしたそうです。同じくメディアの重圧にさらされ孤独を感じた者として、ホイットニーの気持ちを理解し支え合っていたんだなと思うと涙が出てきますよ。

(映画ライター 山懸みどり)

movie info

作品名
『ホイットニー 〜オールウェイズ・ラヴ・ユー〜』(2018年)
監督
ケヴィン・マクドナルド
出演
ホイットニー・ヒューストン
公式サイト
http://whitneymovie.jp/
2019年1月4日(金)ロードショー

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