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本人の映像や言葉にこだわり、ありのままのマリア・カラスを見せる!世紀の歌姫の素顔に迫るドキュメンタリー

#REVIEW
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世界初公開の映像と共に描く濃厚な人生

この作品は、20世紀を代表するソプラノオペラ歌手マリア・カラスの素顔に迫るドキュメンタリーです。若い人はあまり彼女に馴染みがないかもしれませんが、今年公開された『ボヘミアン・ラプソディ』でもフレディ・マーキュリーがレコード会社の重鎮に「こんなオペラがやりたい!」とマリア・カラスを例に出すシーンがありました。つまりオペラと言えばマリア・カラス──というふうに、ある程度の年代の音楽ファンには常識であるほどのカリスマ歌手なのです。

ただし彼女はスキャンダルや声の悩みなどに見舞われ、絶頂期は10年程度。生きたのも53年間と短く、まさに凝縮された人生でした。今回のドキュメンタリーではそうした面に焦点を当てるために、これまで出ることのなかった貴重な映像が使われ、本格的なドキュメンタリーに仕上がっています。

監督を務めたトム・ヴォルフはまだ33歳。彼はロシア生まれで、2013年にニューヨークにやって来て初めてカラスの存在を知ったとか。そしてカラスの魅力に圧倒されて映画を作ろうと思い立ったのです。

彼は日本の版元にもアプローチして貴重なアーカイブを集め回り、彼女の近親者にも膨大なインタビューを敢行したのですが、そこでふと立ち止まり「周りの証言を入れるべきか」と考えました。そして結局、証言は一切入れず、あくまでもカラスの写った映像や彼女自身の言葉だけで構成することにしたのです。

ドキュメンタリーとしては特殊な手法なのですが、確かに周りの証言というのはどこまで本当か分かりませんからね。本物のマリア・カラスをとことん追求したドキュメンタリーとして、客観的に評価されて然るべき作品だと思います。

(映画ライター 斉藤博昭)

見ごたえのある歌唱シーン

マリア・カラスの伝記映画やドキュメンタリーはこれまで何本も作られています。その口火を切ったのは、彼女の晩年のエピソードに絞った2002年の映画『永遠のマリア・カラス』で、この時にカラスを演じたファニー・アルダンが今回はナレーションを務めています。

そのナレーションで読み上げられる内容は、カラスの未完の自叙伝やプライベートの手紙を集めて再構成したもの。つまり、カラスの言葉を彼女自身がしゃべっているように感じられるわけです。

カラスのようなアーティストのドキュメンタリーというのは、得てして本人の人生を追うことに時間を割いて、実際の演奏シーンは少なかったりします。ところがこの作品では、カラスの歌唱が日本語字幕付きでたっぷり聴けて嬉しいですね。またこうした構成によって、彼女の歌と人生の絡み合いがよく伝わってきます。

そして最後の方では、ファニー・アルダンのナレーション、つまりカラス自身の言葉として「私の自叙伝は歌の中に綴られている」というキラーフレーズが登場します。この言葉に象徴されるように、カラスの人生が歌の中に流れ込んでいったというメカニズムが、スッと見る者に入ってくる作品に仕上がっています。ファンだけでなくビギナーも楽しめる、マリア・カラスのベスト盤というべきオススメの音楽ドキュメンタリーですよ。

(映画ライター 森直人)

movie info

作品名
『私は、マリア・カラス』(2017年)
監督
トム・ヴォルフ
出演
マリア・カラス
公式サイト
https://gaga.ne.jp/maria-callas/
2018年12月21日(金)ロードショー

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