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血のつながらない家族と彼らを見守る隣人──ささやかな幸せを揺るがすロス暴動の真実を描く感動作

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ある家族の視点から描く“アメリカ史に残る暴動”

この作品は、1992年にロサンゼルスで起きた暴動を背景にした社会派ドラマ。身寄りのない子供たちを世話する女性が暴動に巻き込まれ、どんな現実を目にするかが描かれています。

その中でとてもよく描かれているのが“暴動の本質”です。黒人青年が警官たちに理不尽な暴力を振るわれたことが、サウスセントラル地区に住む有色人種たちの反感を買い、怒りとして爆発し暴動が発生。暴動というのは広がれば広がるほど、元々の原因だった警官への怒りだけでなく貧しさや差別への鬱憤などが噴出し、異人種の経営している店からの盗難・略奪へとエスカレート。ひと口に暴動と言ってもその構成要素は伝わりづらいものですが、この作品ではその本質が冷静に描かれています。

その一方、こうした暴動が間違ったものだと気づいている人たちもいて、ファーストフード店を燃やされそうになった店員が子供たちに「もうハンバーガーを食べられなくなってもいいのか」と説得します。そうした人間性を持つ人物も描かれた、とてもパノラマ感のある作品に仕上がっています。

(映画ライター 相馬学)

ニュース映像を多用し臨場感を演出

監督のデニズ・ガムゼ・エルギュヴェンはトルコ生まれの女性で、生後半年からずっとフランスで生活しているにもかかわらず、国籍申請を2度も拒否されています。差別とは目に見えない底辺にずっと横たわっていることを監督は日常で肌に感じているため、異国で起きたロス暴動などにとても共感したそうです。実際に監督は暴動が起きた地区の住民やメディアにも細かく取材し、脚本を書き上げました。

この作品を見てとても上手いと感心したのが、主人公たちが自宅のテレビで見ている映像。全編の3分の1ぐらいは実際のニュース映像が挿入されているのです。見ている私たちが「今、外に出たら暴動が起きているんじゃないか」と思えるほどの臨場感が醸し出され、それによってこの作品で描かれている問題がひしひしと伝わってきます。

ハル・ベリーが演じる肝っ玉母さんのミリーは、身寄りがなかったりアル中の親に育児放棄された子供たちを引き取って育てているのですが、実際にサウスセントラル地区にこうした女性がいるそうです。ハル・ベリーはさすがオスカー女優だけあって上手い!

そのミリーが住む家の隣には、人種差別をする気難しい作家がいるんです。演じているのは『007』シリーズのダニエル・クレイグ。そんな彼が子供たちと接するうちに、この劣悪な環境から守ってあげなければ!と考えるようになり、その変化は『グラン・トリノ』でクリント・イーストウッドが演じた主人公を彷彿とさせます。イーストウッドと共通するクレイグの男臭さがとても素敵ですよ。

(映画ライター 金子裕子)

movie info

作品名
『マイ・サンシャイン』(2017年)
監督
デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン
出演
ハル・ベリー/ダニエル・クレイグ
公式サイト
http://bitters.co.jp/MySunshine/
2018年12月15日(土)ロードショー

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