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「フランケンシュタイン」の生みの親は18歳の女性だった──19世紀女流作家の美しくも哀しい人生を描く

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サウジアラビア初の女性監督が描く

この作品は、200年以上も愛され続けている小説「フランケンシュタイン」が誰によってどのように生み出されたかを描いています。私たちは「フランケンシュタイン」の物語を知っているし、この小説からアイデアを得た映画もたくさん見てきましたが、作者のメアリー・シェリーがどんな人でどのように物語を作ったのかまでは知りませんでした。

彼女は18歳で小説のアイデアを思いつき20歳で書き上げるのですが、18歳の女性がこんな物語を考えつくなんて!と驚かされました。

メアリー・シェリーを演じるのは、20歳の若手女優エル・ファニング。18歳前後の女性が大人へ変わっていく瞬間というのは何か特別であり、その瞬間にしか出せないものがあります。まさにメアリーはそうした時期の中にあり、エル・ファニングが同じ年代でメアリー役に巡り会うのも、運命のように感じられます。

監督を務めるのはサウジアラビア人女性のハイファ・アル=マンスール。欧米ほど女性の権利が高いとは言えないサウジアラビアで育ってきた女性監督なら、きっとメアリー・シェリーを魅力的に描けるのではないかと考えたプロデューサーがハイファ監督を抜擢。オファーを受けたハイファ監督もメアリーにとても共感したそうです。

メアリーもハイファ監督も女性にとって厳しい環境で自ら道を切り開いていった人なので、共感したというエピソードも納得です。女性が生きづらさを感じていた時代の物語はハイファ監督だからこそ描けたもので、19世紀の物語ではありますが現代の女性にも響くものがありますよ。

(映画ライター 新谷里映)

現代の女性にも通じる勇気を与える物語

メアリー・シェリーに「フランケンシュタイン」を執筆に至らせたキーポイントとして2人の男性が存在します。その1人が詩人のパーシー・シェリーです。

パーシーとメアリーは恋に落ち、親に結婚を反対されて駆け落ちするも、パーシーの親から送金を止められて極貧生活を送ることに。やがて2人の間に娘が生まれるのですが、家を立ち退かなくてはいけないというドサクサの間に娘が亡くなってしまい、メアリーの心の中で「最愛の人に蘇ってほしい」という思いが強くなっていきます。しかもパーシーは妻子持ちの自由恋愛主義者だったという裏切りに遭い、メアリーはどん底に落とされます。

もう1人、彼女に影響を与えた男性が、悪名高き詩人のバイロン卿。メアリーの義理の妹クレアと愛人関係になった彼は、貧しいパーシーとメアリーを豪邸に招きます。退廃的な生活を送りながら高尚な芸術論をメアリーに吹っかけて、彼女の創作意欲やイマジネーションをかき立てます。

結局バイロン卿もクレアを捨ててしまい、メアリーは「誰かに頼るのではなく、独自の想像力で執筆して独立しなければいけない」と気づき、悲しみから立ち上がるわけです。

これは19世紀イギリスだけの話ではありません。現代でも女性が自分の才能を発揮したり、やりたいことをやろうと思っても、なかなか実行できないことがあります。その意味でこの作品のテーマは非常に現代的。メアリーがどん底から立ち上がって自ら目指す人生を歩んでいく姿はとても清々しく、現代の女性たちも勇気をもらえるのではないでしょうか。

(映画ライター 金子裕子)

movie info

作品名
『メアリーの総て』(2017年)
監督
ハイファ・アル=マンスール
出演
エル・ファニング/ダグラス・ブース
公式サイト
https://gaga.ne.jp/maryshelley/
2018年12月15日(土)ロードショー

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