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伝説のミュージシャンの激動の人生を、貴重な映像と音源、そして本人の語りで辿る

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クラプトン自らが語る“名曲に秘められた真実”

世界三大ギタリストに数えられるエリック・クラプトンの人生を描いたドキュメンタリーです。特徴としてまず挙げたいのは、クラプトン自身がナレーションを務めていること。

ミュージシャンをテーマにしたドキュメンタリー映画は数多くありますが、だいたいは本人が亡くなった後に関係者たちがその生涯を振り返るというトリビュートの意味合いが強い。一方、この作品では存命のクラプトンが自らの人生における過酷な一面まで、ナレーションとして赤裸々に語っているのが魅力となっています。

今回の監督リリ・フィニー・ザナックは、夫が『JAWS/ジョーズ』などのプロデューサーを務めた人で、父も20世紀フォックスの創立に携わった、いわば映画一家の女性。彼女は1991年に『RUSH/ラッシュ』で監督を務めたことがあり、この映画で主題歌に用いたのがクラプトンの名曲「Tears in Heaven」でした。

息子の事故死から生まれたという制作背景も話題になった曲ですが、私は「息子の死を歌い続けることは辛くないのかな」とこれまでずっと疑問に思い続けていました。それが今回のドキュメンタリー映画を見て、「息子を愛している気持ちを歌にすれば、そうした気持ちを回りに気兼ねなく言葉にできる」というクラプトンの心境を知ってなるほどと思いました。

息子を亡くして悲しい気持ちを芸術という形にすれば、何度でも悲しい気持ちを言葉にしても構わない。つまり、クラプトンは「Tears in Heaven」を歌うたびに悲しい気持ちになるわけではなく、歌うたびに癒やされていたのか──。そう気づけたことがこの映画の最大の収穫でした。

(映画評論家 松崎健夫)

波乱に満ちた人生を赤裸々に描く音楽ドキュメンタリー

1950〜60年代に活躍したミュージシャンたちと同様、セックスやドラッグなど自由な青春時代を送っていたエリック・クラプトンは女性遍歴が華やか。その中でもハイライトとなる相手がパティ・ボイドです。

彼女は美人ですごくモテて、ビートルズのジョージ・ハリソンの妻でありながら、ミック・ジャガーなど多くのミュージシャンに惚れられたそうです。クラプトンはジョージと仲が良くて、近所に住んでセッションをしたり家を行き来し、そんな中でパティと知り合います。

親友の妻を好きになるが、報われず苦しむ──そうした葛藤の日々から生まれた曲が「いとしのレイラ」でした。この曲が愛する人のことを思って作られたということは知っていましたが、これほどの葛藤があったとは!とこの作品を見て驚きました。

結局パティは離婚しクラプトンと再婚するのですが、彼の女性遍歴はまだまだ続いていく…ドキュメンタリーでありながらまるでドラマを見ているような面白さがあります。

また、1950〜70年代のクラプトンの歩みを辿っていくと、彼の人生が音楽の歴史でもあることが分かります。特にこの時代はUKロック全盛の華やかな頃で、アーカイブに登場するミュージシャンがとにかく豪華!ビートルズ、ローリング・ストーンズ、ザ・フー、ボブ・ディラン…次から次に出てくるミュージシャンたちを見ているだけでも楽しくい。もしクラプトンに興味がなくても、その時代のカルチャーや音楽を楽しめる作品に仕上がっていますよ。

(映画評論家 立田敦子)

movie info

作品名
『エリック・クラプトン〜12小節の人生〜』(2017年)
監督
リリ・フィニー・ザナック
出演
エリック・クラプトン
公式サイト
http://ericclaptonmovie.jp/
2018年11月23日(祝・金)ロードショー

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