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ガンジス河で最期を迎えたい…死期を悟った父と息子の聖地巡礼をハートフルに描くヒューマンドラマ

#REVIEW
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27歳の新鋭監督の視点で見せるインド映画

インド映画といえば、歌やダンスなどの娯楽要素をふんだんに詰め込んだ“マサラムービー”を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

この作品はそうしたスタイルとは違って、いたって静かな劇映画です。『大地のうた』のサタジット・レイ監督の系譜に連なるような王道映画であり、現代的なセンスやユーモアもある滋味深い傑作。すでに世界各地で高い評価を受けています。

物語の主人公は、70代の父親ダヤ。ある夢を見て死期を悟った彼は「バラナシに行きたい」と家族に宣言します。バラナシには「解脱の家」という施設があって、ここで死の瞬間を迎えてあの世へ旅立つんだそうです。このように死をポジティブに捉えているのが、ヒンドゥー教文化のインド独特だなと驚かされました。

インドは巨大な国で、現代文明と伝統・慣習との混ざり方がとてもダイナミック!解脱というコアな宗教的概念が生きている一方、家族との会話にスカイプを使っている、デジタルと伝統の混在ぶりはスゴイの一言です。

もう1つ衝撃的だったのが、27歳という監督の若さ。言ってみればこの作品は、若い才能による“インド再発見”みたいなもの。世代間の違いから立ち上がってきた物語という側面を考えると、より興味深く見ることができますよ。

(映画ライター 森直人)

小津安二郎の『東京物語』を思わせる傑作

この作品は、主人公が聖地でどのように死を迎えるかがテーマであると同時に、父を聖地まで連れて行く息子の物語でもあります。

息子にとって、父の死期が迫っているのは辛い出来事だし一緒にいたいけど、自分にも仕事や家族がある。双方の間で葛藤する息子の姿を通じて家族のあり方を描き出す、親子の物語にもなっています。

この作品を撮影するにあたってシュバシシュ・ブティアニ監督は、小津安二郎の『東京物語』を参考にしたそうです。世代の違う親子の関係、息子が暮らす都市と父が暮らす田舎の対比、さらには映像の構図…。世界中の親子が共感できるポイントがたくさんある作品に仕上がっています。

また、後半で心に引っかかったセリフがあって、思わずメモを取ってしまいました。「なかなか死ねないのは自分の努力が足りないのかな」と漏らす主人公に対して、ある女性が「小手先の努力で死は訪れない。死は心から訪れるのよ」と答えます。その意味を完璧に理解しているわけではありませんが、今後の人生に意味があるかも、と思いこのセリフを心に留めています。

他にも、死と向き合っている状況だからこそ生まれる深いセリフがたくさんあります。どんな言葉が心に響くかは人それぞれだと思うので、映画を見て自分に響くセリフを探してはいかがでしょうか。もちろんセリフ以外にも様々な気づきや共感にあふれた作品なので、年齢を問わず見てほしいですね。

(映画ライター 新谷里映)

movie info

作品名
『ガンジスに還る』(2016年)
監督
シュバシシュ・ブティアニ
出演
アディル・フセイン/ラリット・ベヘル
公式サイト
http://www.bitters.co.jp/ganges/
2018年10月27日(土)ロードショー

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