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家族を称えよ!愛を称えよ!映画を称えよ!『KAWASAKIしんゆり映画祭』広報担当の越智さんに聞いてみた!

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10月28日(日)、10月30日(火)~11月4日(日)に川崎市アートセンターにて開催される『第24回 KAWASAKIしんゆり映画祭 2018』。バリアフリー上映やジュニア映画制作ワークショップも行われる市民(みんな)がつくる映画祭について広報担当の越智さんにお聞きしました。

映画祭のコンセプトや今年のテーマを教えてください。

1995年に川崎市の「芸術のまち構想」の一環として始まった映画祭で、川崎市や周辺の企業・商店の皆様に支えられて今年で24回目になります。

「市民(みんな)がつくる映画祭」が、映画祭発足当時から基本のコンセプトになっていて、小さなお子様からご高齢の方まで、老若男女問わずどんなお客様にも広く楽しんでいただけることを念頭に、プログラム選定などをボランティアの市民スタッフがしています。

「みんな」の中には、障がいを持った方も含まれています。視覚に障がいをもつ方には、映画祭スタッフが制作した副音声ガイドをつけて上映したり、聴覚に障がいを持つ方には日本語字幕付き上映作品を選んだりしております。子育て中の方にも楽しんでいただこうと保育を付ける上映回もあります。

今年の映画祭についてもコンセプトは変わらず、2018年の今、新百合ヶ丘を中心に、広く市民の皆様に観ていただきたい作品を厳選しました。今年のキャッチフレーズは「家族を称えよ!愛を称えよ!映画を称えよ!」です。

国内でもかなり地域密着型の映画祭だと思いますが、その成り立ちは?

新百合ヶ丘にある日本映画大学の前身である日本映画学校は、故・今村昌平監督が始められた学校で長く校長も務められていました。映画祭立ち上げの一人が新百合ヶ丘に引っ越してきた頃、このあたりは映画館も何もないところだったそうで、その方が「映画も文化も何もない土地だ」と今村監督にぼやいたそうなんですね。すると「文化がなければ自分で作ったらいい」と監督がおっしゃったとか。

先ほど述べた副音声ガイド付き上映についても、お客様の一人から「中途失明したけれど私も前と同じように映画館で映画を楽しみたい」というお声が寄せられたことがきっかけで、では作ってみようとなった時、20年以上前のことゆえ、快諾して下さる配給会社がなかなかなかったそうなのですが、今村監督が「だったら『うなぎ』につけたらいいよ」とおっしゃってくださったそうです。

ともかく、自分たちでやってみよう。動いてみよう。手作りで、やってみよう。そんな気風や気概は故・今村監督や映画祭立ち上げのメンバーから今も引き継がれているかなと思います。

2016年の中川龍太郎監督のトークの様子。なんと監督は新百合ヶ丘ご出身!今年は中川監督の『四月の永い夢』を上映。© NPO法人KAWASAKIアーツ

映画祭を開催することの「魅力」「おもしろさ」「大変さ」といった点は?

他の映画祭さんも大なり小なり似た面があると思うのですが、主に予算と、集客については、日々頭を悩ませています。

予算の確保には川崎市などからの公的な負担金などのほか、市民スタッフがいろんな企業にお願いに行きご支援をいただき、毎年工夫しながらなんとか運営しています。

集客については、テレビだけではなくネットや携帯端末で映画を楽しむ方が増えてきて、大きなスクリーンで見ようと足を運ばれる方が減ってきていますよね。足を運ぶ方は中高年よりも上の世代になってきている。そんな中をいかに来ていただこうかと、苦心しています。

でも、いろいろ大変なことがあるから逆に、映画祭で映画を観終えたお客様が充実したお顔をされていたり、上映後に監督やキャスト、お客様のコミュニケーションの場になっていたりする場面に立ち会えた時、またそれを映画祭スタッフの仲間と共有できるのは、何ものにも代えがたい楽しさです。

映画祭の宣伝や情報発信について教えてください。

チラシやHP、SNSでの発信などはもちろん行っていますが、もっとメディアの方に取り上げていただくにはどうしたらいいかと悩むところです。また、うちの映画祭は、観に来てくださったお客様にもっと楽しんでいただこうと作品にちなんだ飾り物などをスタッフが作ることがある種の伝統なのですが、その「お祭り」としての空間・場を、どのように事前に伝えて発信していけばいいか、知恵を絞っていかなければと思います。

『横道世之介』上映時に、スタッフ手作りの被り物をお客様にかぶっていただき、沖田修一監督をお迎えした様子。今年は沖田監督の『モリのいる場所』を上映。© NPO法人KAWASAKIアーツ

上映作品や特別企画で特にオススメするものはありますか?

市民スタッフたちで考えに考え抜いて厳選した作品たちですので、ぜんぶオススメです(笑)。

個人的にはアジア映画特集ですね。アジアの様々な国を舞台に、エンターテインメント作品からドキュメンタリーまで、映画が持つ多面的な魅力が伝わる企画になったかと思います。また、上映作品すべてに、「家族」や「愛」といったテーマが共通しています。そんなことを、作品の端々からお感じいただければうれしいです。

日本・フランス・インドネシア合作、深田晃司監督の『海を駆ける』。バリアフリー日本語字幕付上映。© 2018 ”The Man from the Sea”FILM PARTNERS

映画祭のおすすめの楽しみ方はありますか?

ふらっと来ていただいても、また、皆勤賞なみに通っていただいても、どんな楽しみ方をしていただいても良いように私たちは準備しています。初日は、会場の前でハロウィンパレードが行われ、屋台も出るようですし、映画を観終わってから後は近くのお店にお立ち寄りいただければとも思います。新百合ヶ丘という映画の街を少しでも楽しんでいただければ。

インド映画『恋する輪廻』をマサラ上映した時の様子。今年はインド映画『バーフバリ 王の凱旋 完全版』の上映時に、絶叫上映を実施予定。© NPO法人KAWASAKIアーツ

最近気になった映画や好きな映画を教えてください。

私たちはなつやすみ野外上映会も行っているのですが、今年の上映作品だった『パディントン2』。そして今年の映画祭オープニング作品の『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』。どちらも、その国の歴史的背景や今、抱えている問題を物語に取り込みながらも幅広いお客様を惹きつける優れたエンターテインメント作品だと思います。

また、邦画ではやはり『万引き家族』。初期のテレビドキュメンタリーの頃から、是枝監督の眼差しはずっと変わらないなと思います。そして、今年の日本の映画界では事件ともいえるでしょう、『カメラを止めるな』。映画はカメラで撮る、その楽しさを原点にしつつ、ものすごくきちんと作られたパワーあふれる作品だと思いました。

今年のオープニング作品『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』。韓国では1,200万人突破の大ヒット!COPYRIGHT © 2017 SHOWBOX AND THE LAMP. ALL RIGHTS RESERVED.

『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』公式サイト
http://klockworx-asia.com/taxi-driver/

『パディントン2』公式サイト
http://paddington-movie.jp/

『万引き家族』公式サイト
http://gaga.ne.jp/manbiki-kazoku/

『カメラを止めるな』公式サイト
https://kametome.net/

最後に、お伝えしたいことがあればお願いします。

テレビでも、ネットでも映画は楽しめると思いますが、映画祭という「場」にぜひいらして、多くの方たちと一緒に楽しんでください。新百合ヶ丘は都心からもアクセスが良い場所です。一度ぜひお越しを!

event info

映画祭名
『第24回 KAWASAKIしんゆり映画祭 2018』
概要
10月28日(日)、10月30日(火)~11月4日(日)に川崎市アートセンターにて開催。
公式サイト
http://www.main.siff.jp/

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