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少女暴行事件の真実は“記憶”の中に──恐怖が謎を増幅する、実話に基づいた衝撃サスペンス
先入観・妄想から生まれる恐怖を描いたサスペンス
この作品は、1990年代のアメリカで実際にあった悪魔崇拝を背景に、ある田舎町で起こる事件を描いたサスペンス。一人の少女が父親に性的暴行を受けたと訴えて教会に保護され、父親はまったく記憶がないのに罪を認めます。何かおかしいと不審に思ったイーサン・ホーク扮する刑事が、心理学者と一緒に謎を追ってくというストーリーです。
追う刑事、協力する心理学者、少女を助けた神父、容疑者になった父親とその家族…。いろんな立場の人たちが、事件が起きたことによってどのように動いていくかを、とても複雑に入り組んだ構造で描いています。
また、刑事であれば長年の経験に基づく直感、心理学者であれば失った記憶を引き出すために行う退行療法、というように、どのキャラクターにも自分が“信じているもの”があります。それは言ってみれば“正しいと思い込んでいるもの”でもあり、思い込みすぎるがゆえのキャラクターたちの問題点が、物語が進むにつれて見えてくるのです。
例えば、気味の悪い悪魔崇拝を行うカルト教団が存在するけど、どこにいるか分からない──そうした恐怖が主人公の思い込みにつながってくる。それぞれの思い込みの背景にある“恐怖”にも注目してください。
(映画ライター 相馬学)
鬼才アメナーバルの元に実力派俳優が集結
この作品は第一に、アレハンドロ・アメナーバル監督が主役と言って過言ではありません。彼は『オープン・ユア・アイズ』などの秀作で “スペインの天才”と呼ばれ、ハリウッドに招かれて『アザーズ』を手がけました。現実と幻覚のせめぎあいをテーマに好むことからM・ナイト・シャマラン監督と比較されることがありますが、シャマランが数学的なのに対してアメナーバルはアート的かな。
そんなアメナーバルにとって8年ぶりの監督作ということで、正直言うと懐疑的な眼差しで見ましたが、今回も現実と幻覚のせめぎあいというテーマが見事に描かれています。
ただ、それ以上にアメナーバルの監督パワーが健在だと実感したのがキャスティング。事件に取り込まれていく刑事役にイーサン・ホーク。父親を訴える少女役にエマ・ワトソン。刑事に協力する心理学者役に英国の名優デヴィッド・シューリス…。これだけの国際的なスターたちが集まってくるのですから!
なかでも物語のキーパーソンを演じるエマ・ワトソンは、彼女のキャリアの分岐点となるような熱演を見せています。そういうチャンスを彼女に与えるということからも、アメナーバル監督のパワーが感じられますね。
(映画ライター 清藤秀人)
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