film talkfilm
talk

些細な口論が国を二分する裁判へ──レバノンの歴史と社会背景を活かした法廷ドラマ

#REVIEW
  1. TOP
  2. FILM TALK

法廷劇を軸に描き出される歴史と社会背景

この作品の舞台は、2015年のレバノンの首都ベイルート。修理工場を営むレバノン人男性トニーと、パレスチナ人の住宅現場監督ヤーセルが、ちょっとしたことで小競り合いに。

この2人の間で裁判が起きるのですが、双方に就いた弁護士たちの間にも確執があり、さらに2人の宗派対立、今回の大騒ぎを政治に関連づけたいメディアが絡んで問題が膨らんでいく。そうして国を揺るがす一大事へと化していく構図が、裁判という太い柱を軸に分かりやすく描かれています。

また、様々な立場の人々の思惑や考え方が、裁判という形に整理されることによって、私たち日本人が見ても理解できるようになっています。

またこの作品を見て感心したのは、世界にはまだまだ良い俳優がたくさんいる!ということ。トニー役のアデル・カラムは、最初は乱暴で意固地というイヤな男なんです。だけど、裁判でいろいろなことが明らかになり、彼の心の傷や忘れられない民族の歴史が描かれていくにつれて、すごくイイ顔つきの男になっていくんです。

そうして様々な心の鎧を脱いでいくプロセスを、とてもうまく演じています。他の男優や女優も素晴らしい演技ができる人ばかりで、新たな発見でしたね。

(映画ライター 金子裕子)

エンターテインメントとして楽しめる感動作

レバノン作品として初めてアカデミー外国語映画賞にノミネートされ、ヴェネチア国際映画祭ではヤーセル役のカメル・エル・バシャが男優賞を受賞した作品です。

この物語はそもそも、いさかいを起こしたトニーとヤーセルがそれぞれ一言「ごめん」と言えば収まる話です。そんな小さなトラブルが当事者の手元を離れて巨大化していく哀しさと恐ろしさ、そして個人の意思に反していろいろな要素が絡んで大問題へ発展していく皮肉な構図が見どころとなっています。

こうやって説明すると、取っつきづらい小難しいテーマに感じるかもしれませんが、実はエンターテインメントとして楽しめる作品に仕上がっています。

ジアド・ドゥエイリ監督はクエンティン・タランティーノの『レザボア・ドッグス』や『パルプ・フィクション』で撮影助手に就いた経験があり、ハリウッド流のエンターテインメント製造法を熟知しています。だから、法廷劇にしてはカメラワークがドラスティックだし、展開もすごくドラマチックで、その中から人間の魅力が浮き立ってきます。

レバノン映画だからとハードルを高くせず、エンターテインメント映画としてハードルを低くして楽しんでいただきたいですね。

(映画ライター 清藤秀人)

movie info

作品名
『判決、ふたつの希望』(2017年)
監督
ジアド・ドゥエイリ
出演
アデル・カラム/カメル・エル・バシャ
公式サイト
http://longride.jp/insult/
2018年8月31日(金)ロードショー

NEW ARRIVAL