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自分だけで家事育児を頑張りすぎる母親が出会った救いの女神とは?シャーリーズ・セロン主演のヒューマンドラマ

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疲れ果てた母親の前に現れたベビーシッター“タリー”

こちらの作品は、女子高生の妊娠を描いた『JUNO/ジュノ』で話題を集めた、ジェイソン・ライトマン監督と元ストリッパーの脚本家ディアブロ・コディによるコンビ第3弾。さらに、前作『ヤング≒アダルト』で起用されたシャーリーズ・セロンがプロデューサーも兼ねて再び主演しています。このトリオは、今のハリウッドにおいて稀有な“女性映画の発信者”。いわば1つのブランドです。

シャーリーズ・セロンが演じている主人公マーロは、20代のときはイケイケで才能にも恵まれていました。30代になって3人目の子どもを妊娠するのですが、出産・育児はキツいし夫婦生活もパッとしないし、夢なんてとっくに捨ててしまった。そんなズタボロになったどん底のマーロの前に、兄の推薦で派遣されたベビーシッターのタリーが現れます。

タリーは“21世紀のヒッピー”と言うべき自由な女性でありながら、ベビーシッターの仕事を完璧にこなしてみせます。なおかつ、ストレスを抱えるマーロを飲みに連れて行ったり、夫婦生活の相談にも乗ってくれる。

もうベビーシッターどころではなく救世主であり、若い頃の夢をもう一度見させてくれる親友のような存在なわけです。マーロと同じような生涯をたどってきた子育て中の女性や、人生の曲がり角を迎えてどうにもならなくなったような人に、ぜひ見てほしい作品です。

そしてこの“救世主”タリーを演じるマッケンジー・デイヴィスが最高! 『ブレードランナー2049』で主人公がL.A.を闊歩する際に出会うヒッピー女性3人組の一人を演じた女優ですが、今回の方が断然輝いています。人間の夢と自由のような象徴で、オスカー女優シャーリーズ・セロンも霞むようなイキイキとした存在感──まさにこの作品のキモと言えます。

(映画ライター 清藤秀人)

頑張りすぎる女性を熱演したシャーリーズ・セロン

シャーリーズ・セロンは今回の役を演じるにあたって18kg増量しました。単純に考えて18kgも体重を増やすなんて難しいことですが、彼女は実在の殺人鬼に扮した『モンスター』でも体重を増やし、紙も眉毛も抜くというアプローチでアカデミー賞に輝いた女優です。

そうしたセロンの役者魂が強く感じられると同時に、今回のような“家族”というテーマがセロンにとって非常に大きなことなんじゃないかな、と見ていて感じました。

幼少期の家庭環境に恵まれなかったセロンは、家庭というものに対して人一倍強い思いがあるはず。この作品の脚本を読んで「新たなアプローチで家族を描いている」と感じたセロンは、子育て女性のグループセラピーに参加し、心的なストレスを抱える人々からリサーチした上で役を演じました。プライベートも含めて“家族”に思い入れの深いセロンならではの演技が見られる作品に仕上がっています。

そして物語が進むにつれて、マーロとタリーの関係が面白い方向に向かいます。あらすじだけ聞くとヒューマンドラマのように感じるでしょうが、実はこの作品にはコメディ要素もあります。息詰まるような物語が進行する中、ひょいと笑いが起こることによって観客がふと力を抜けるようになっているので、そのさじ加減もぜひ劇場で体験してみてください。

(映画パーソナリティー コトブキツカサ)

育児に悩む人々へのメッセージが込められた作品

今年だけでも『万引き家族』だったり、同作に影響を受けた『フロリダ・プロジェクト』とか、いろいろな視点で子育てを描く映画が近年は世界的に増えています。つまり、子育てが世界共通の問題として意識されているということ。

子育て映画にはおおむねサブテーマとして「貧困」や「社会」という問題が付随してきます。この作品もまさにその1つ。主人公マーロの一家は、従来の映画であれば何不自由ない典型的な中流家庭として描かれていたのではないでしょうか。

ところが昨今は中流階級が没落し、中流=見えない貧困という現代ならではの社会問題として映し出されているわけです。マーロの家庭は一見貧乏には見えませんが生活はカツカツで、ベビーシッターを雇えたのも兄の援助があったから。シンプルに描かれていますが、かなり重い問題といえます。

この作品はそんな子育て家庭をリアルに描くことから出発し、第2ロケットでファンタジー要素が入るのですが、では第3ロケットとしてどのように着地させるのか?それはやはりリアリズムでなければいけないと思います。

例えば、ベビーシッターを雇う余裕なんてないんですけど?という問いに対し、この作品ではすごくシンプルなリアリズムで答えています。ネタバレしない程度に言うと、オーバーヒート気味に頑張っている母親たちへのエールと、リラックスのススメ。そして父親たちへの提言です。あるシーンでセリフとして発せられる、「必要なのは、完璧な君より元気な君」というメッセージを気に留めながらご覧ください。

(映画ライター 森直人)

movie info

作品名
『タリーと私の秘密の時間』(2018年)
監督
ジェイソン・ライトマン
出演
シャーリーズ・セロン/マッケンジー・デイヴィス
公式サイト
http://tully.jp/
2018年8月17日(金)ロードショー

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