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映画ライター 清藤秀人さんが語る『イル・ポスティーノ』の魅力!8月12日(日)よる9時からBS10で無料放送!

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映画をもっと。プロジェクト「#あなたの1本 大募集」と銘打って映画ファンの皆さんからオススメしたい良作を募集したtwitterキャンペーン。その無料放送には、イタリア映画『イル・ポスティーノ』が決定!8月12日(日)よる9時からBS10 スターチャンネルで無料放送となります。

今回は、まだ『イル・ポスティーノ』を見たことがない方の為に、映画ライター 清藤秀人さんにその魅力について語っていただきました。

映画ライター 清藤秀人さんが語る『イル・ポスティーノ』の魅力!とは。

 見終わった後、何年にも渡って余韻が残る映画があります。「イル・ポスティーノ」はまさにそんな名作の代表格。理由は色々あるでしょう。まず、1950年代に母国のチリを追われ、イタリアのナポリ沖合の小島に流れ着いた詩人で共産主義者のパブロ・ネルーダと、島の郵便配達人、マリオが、詩を介して関係を深めていくプロセスがいい。断崖の麓に寄り添うパステルカラーの港町を背景に、また時には、砂利の海岸に押し寄せるさざ波を聞きながら男2人が触れ合う姿は、アカデミー作曲賞を受賞したアルゼンチン人作曲家、ルイス・エンリケス・バカロフのアコーディオンをフィーチャーした物悲しいメロディにも助けられ、ただひたすら、観る側の叙情を掻き立てます。

 この作品に惚れ込み、脚本と主演を兼任するマッシモ・トロイージが、持病の心臓病が重篤な状態だったにも関わらず、詩の魅力に目ざめて行くマリオを渾身の演技で体現している点も見逃せません。トロイージの消え入りそうな風情に、撮影終了の12時間後、心臓発作で41歳の若さで旅立った彼の劇的な生涯を重ね合わせると、否が応でも切なさが倍増します。

 でも、本作が1996年度キネマ旬報外国映画ベストテン1位に選出され、同年3月に全米公開された後、特にニューヨークで延々2年近くロングランされた理由は、叙情味や主演俳優の名演だけではなさそうです。

 浜辺で詩を朗読したネルーダに感想を聞かれたマリオは、「言葉の真っ直中で揺れる小船のよう」と、その気持ちを詩的に表現し、ネルーダを驚嘆させます。また、港で魚を安く買い叩かれる漁師に、人生を漁に捧げた寡黙な父親の姿を見出し、「利益を搾取されちゃいけない」と声をかけます。つまり、マリオは生来が詩人で且つ共産主義者だったのです。ネルーダとマリオ。同じ才能と思想の持ち主が運命に導かれ、出会い、たとえ別れても、共有した尊い時間は永遠に色褪せることはありません。そのことが、人々が繋がりを求めて彷徨うこの時代だからこそ、長く、深い感動を呼ぶのではないでしょうか。

(映画ライター 清藤秀人)

また、『イル・ポスティーノ』の魅力については、国内最大級の映画レビューサービスである「Filmarks(フィルマークス)」でのレビューも参考にしてみてください。

https://filmarks.com/movies/10181

イタリア映画『イル・ポスティーノ』は8月12日(日)よる9時からBS10 スターチャンネルで無料放送です。ぜひ新しい映画との出会いをお楽しみください!

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