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ナチスの目を欺いてベルリンに潜伏し続け、ホロコーストを免れたユダヤ人たちの感動の実話

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生きる希望を捨てなかったユダヤ人たち

ナチスドイツ政権下のベルリンからはユダヤ人がすべて一掃されたことになっていましたが、実は7000人ものユダヤ人が地下に潜伏し、そのうち1500人は終戦まで生き延びました。この映画ではそのうちの男女4人を主人公とし、彼らがいかにして住居や食料を得て生き延びたかが描かれています。

この映画のポスターにも描かれている男の子は、親がナチスに捕まって収容所へ送られる際に機転を利かせ、自分だけ難を逃れます。こういう時、親は自分よりも子供のことを第一に考えるけど、若い人たちは自分のことを第一に考える。そのギャップに驚きましたが、親だって自分の子供には生き延びてほしいですよね。「絶対に生き延びるんだ」という強い意志を持ちながら、救いの手を差し伸べてくれる人を見つけられるよう機転を利かせていく姿が、すごいなと感心しました。

(映画ライター 新谷伸子)

ナチス政権を描いた作品を製作する意義

ナチス政権を描いた映画は毎年数本必ず製作されていますが、ここで考えてほしいのは、ナチスがどうなるかという結論が分かっているのになぜ毎年作られるのかということ。物語としての強さがあるからなのはもちろんですが、悲しい歴史を風化させないという映画の1つの意義があるからこそだと思います。こんな無惨なことがあった、ということを後世に伝える本作のような映画を、当事国のドイツが製作していることによりいっそう意義があります。

この映画が特徴的なのは、劇中で俳優が演じる登場人物の本人たちが実際に登場し、劇映画とドキュメンタリーが融合していることです。ハイブリッド・ムービーと言っても過言ではないでしょう。本人が当時のエピソードを語ることによって、作品自体の説得力が増しています。また、一般市民が戦時下なのに普通に街を歩いたり生活している実際の映像が随所に挟み込まれていて、当時はそれほど切迫していなかったんだなということも分かります。

映画の最後に、潜伏していたユダヤ人女性がインタビューで「私たちが大切にしてきたことがある。それは、助けてくれた人たちについて語ることです」と話していました。つまり、ドイツ人すべてが悪人だったわけではないと後世に伝えたかったのです。生きる希望を捨てなかったユダヤ人たちの実体験に、ぜひ劇場で触れてください。

(映画パーソナリティー コトブキツカサ)

過酷な状況を生き抜いた若者たちの青春映画

この映画のタイトルにある“黄色い星”はユダヤ人の印となる黄色のバッジのこと。これを付けることによって迫害の対象となりますが、逆に言うと、バッジを付けてないとユダヤ人だと認識されない。そこが本作のサバイバルのポイントとなっていて、とても興味深かったです。ユダヤ人が生き残るためには、ユダヤ人という存在を消す必要があるのですが、そのために黄色いバッジを持たなくなれば、身分証も名前もなくなる。仕事に就けないし食料配給も受け取れない。つまり、市民でなくなるということで、想像しただけでもかなり過酷なことですよね。

そんな過酷な状況下を生き抜いた男女4人を中心に描いた映画なのですが、当時の彼らはハイティーンだったので、いわゆる青春映画でもあるというのが大きなポイントです。彼らの中の1人は手先が器用で、ユダヤ人向けの身分証偽造という闇仕事を請け負う。さらにもう1人は、怪しまれないようにヒトラー青少年団の制服を着る。名前だって変えるし髪の毛も染めるし、あの手この手で生き残ろうとします。みんな綺麗事なんか言わず、何でもやるんですよ。そこには人間の不屈のバイタリティが感じられるし、現代に生きる我々も学ぶべきだと思いました。一方、この地獄の状況は同じ人間が作り出したものであり、反面教師として見ると同時に、人間の賢さと愚かさ、希望と狂気の両面を一気に見せてくれる作品となっています。

(映画ライター 森直人)

movie info

作品名
『ヒトラーを欺いた黄色い星』(2017年)
監督
クラウス・レーフレ
出演
マックス・マウフ/アリス・ドワイヤー
公式サイト
http://hittler-kiiroihoshi.com/
2018年7月28日(土)ロードショー

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