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伝説の映画から18年──キューバ音楽バンド最後のツアーを追う音楽ドキュメンタリー

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バンドメンバーたちのルーツや歴史を描く

この映画は、1999年に公開された『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』の続編にあたる作品。今回は『アディオス=さようなら』と銘打たれているものの、前作からのテーマである「音楽も人生もすべて続き、語り継がれていく」というメッセージが再び描かれています。

キューバを旅したライ・クーダーが1940〜50年代に活躍したミュージシャンたちと出会い、彼らとレコードを制作したのが1997年のこと。ライ・クーダーとヴィム・ヴェンダース監督が友人だったことが、ドキュメンタリー映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』の誕生したきっかけでした。それから18年経った今、キューバのミュージシャンたちが敢行する最後の世界ツアーを軸に、彼らの中でどんなことが起きたのかを描いています。その中でハイライトの1つとなるのが、バンドがホワイトハウスに招かれてライブを行い、当時のオバマ大統領に「結成から約20年間、このグループはキューバとアメリカをつなぐ絆の象徴だった」と言われるシーンでしょう。

この映画ではキューバ音楽だけでなく、キューバの歴史であったりミュージシャンたち個人の歴史にも踏み込んでいます。厳しい時代を生き抜いてきた彼らが、どのような思いで音楽を続けてきたのか。一人ひとりの素顔に焦点を当てることで、深みのある映画になっています。

(映画評論家 立田敦子)

キューバ音楽の歴史的背景や歌詞にも注目

この映画ではキューバ音楽独特のジャンルである「ソン」の大御所で、今は亡きイブライム・フェレールにも焦点を当てていて、彼は「人生の後半になって、こんなふうに夢を叶えられるとは思っていなかった」と語りました。また様々なミュージシャンたちも「神様は最後の最後で自分に光を当ててくれた」と語っているように、この映画には、夢をあきらめないこと、そして自分のやりたいことを貫いて誠実に音楽と向き合っていたら誰かが見出してくれる、というメッセージが込められています。こんなにも人生について教えられる映画はそうないな!と思いました。前作を見たことがある人は当時のミュージシャンたちのその後を見る楽しみがあるし、『アディオス』を初めて見る人も純粋に音楽を堪能する楽しみ方ができますよ。

この映画でぜひ感じてほしいのが、植民地時代に奴隷だった人たちが解放された時に作り上げ、さらに白人と黒人の音楽がミックスされていったキューバ音楽の歴史の深さです。奴隷だった時の苦しみだったり、生きることに必死だったり愛に力一杯向き合う思いなどがすべて歌詞になっています。そこもこの作品の大きな魅力なので、ぜひ字幕でしっかり読んでください。

(映画パーソナリティー 伊藤さとり)

変わりゆくキューバを記録した貴重な作品

1999年の『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』が公開された当時に人々が驚いたのは、キューバという国の特殊さでした。経済封鎖されていたため新車がなく、昔の車を修理してずっと使い続ける。それは建物も同じで、ハバナの旧市街なんかいつの時代を映しているのか分からなくなるほど。工芸品のような美意識が感じられる昔の車が走る街は、すごくオシャレな世界に見えました。

そんな街も、経済封鎖が解かれて外国と貿易していくことで変わっていくだろう、と言われていますよね。前作から18年経った今回の映画では、所々で変化しながらもこうした街の景色がまだ見ることができます。面白かったのは、ミュージシャンたちのバンド名の由来にもなっている社交クラブが、今はトレーニングジムに変わっていたというエピソード。今回、続編として撮影してくれたことによって、変わりゆく時代の過渡期と、なくなっていく街の景色が映像として残されたわけです。時代の流れを感じると共に、早くキューバに行かなきゃと思うのではないでしょうか。

(映画ライター 村山章)

movie info

作品名
『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』(2017年)
監督
ルーシー・ウォーカー
出演
オマーラ・ポルトゥオンド/マヌエル・“エル・グアヒーロ”・ミラバール
公式サイト
http://gaga.ne.jp/buenavista-adios/
2018年7月20日(金)ロードショー