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異文化体感『イスラーム映画祭』、今年のメインはパレスチナ映画
主催者の藤本さんに聞いてみた!

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2015年からスタートして今年で3回目となる『イスラーム映画祭』。世界17億人ものイスラームの人々の生活や文化を描いたよりすぐりの映画を上映。東京、名古屋での開催を経て、4月28日(土)からは神戸で開催される。そんな『イスラーム映画祭』について主催者の藤本高之さんに聞いてみた!

『イスラーム映画祭』のテーマは「異文化を理解する」だと思いますが、今回3回目の開催において特に意識されたところはどこでしょうか。

藤本:映画は目と耳と心に訴えてくる芸術ですので、「異文化“理解”」というよりは「異文化“体感”」と言った方が正しいかもしれません。どのみち“疑似”ではあるのですが。

映画を通じてイスラームの文化が広まっている国や地域を旅したような気分に浸っていただく、という基本コンセプトは1回目から変わりませんが、今回上映本数を13本(※神戸は12本)に増やした事で、より“旅”感も増したのではないかと思います。(※1、2回目の上映本数は9本だった)

そして今回はイスラームとは直接関連はしませんが、パレスチナ映画をメインにしました。今年はパレスチナの地にイスラエルが建国され(1948年)、多くの(宗教は関係なく)パレスチナの人々が難民となった年から70年目の節目ですので、イスラーム映画祭3をやると決めた時からパレスチナ映画を取り上げたいと思っていました。映画を通じて少しでもパレスチナ問題に関心が向くきっかけになればと思っています。

3回目となった今年のお客様の反応や感触はいかがでしょうか。

藤本:2015年12月の最初のイスラーム映画祭の時は開催4週間前にパリ同時多発テロが起きた事で、社会的トピックとしての“イスラーム”に関心が集まり、多少皮肉な感じで大入りになったというところがあったのですが、昨年の2回目は純粋にイスラーム文化圏をはじめ非欧米圏の国の文化や言語に興味のある方、そして世界中の映画に関心がある方々に来ていただいたという感じでした。

今回はそれがさらに広まった気がします。いちばんうれしいのはどの作品もほぼ同じ数のお客様にご覧いただいている事ですね。これは映画祭的にも珍しい事だと思います。

パレスチナ映画『ラヤルの三千夜』などが日本初公開ですが、上映する映画はどういった視点でセレクトしているのでしょうか。

藤本:映画はだいたい過去に国内の映画祭で観たものやネットで知ってソフトを取り寄せたものなどから選んでいます。また今回は各国・地域に詳しい専門家の方からレコメンドしていただいたものも入れています。

基本的には戦争や社会性の強いテーマを扱ったものより、人々の素朴な暮らしぶりがわかる地味めの映画を選んでいますが、今回は本数が多い事もあって社会性の強い作品も何本か入れました。

ちなみに『ラヤルの三千夜』は以前からネットで知っていたのですが、ちょうど今回の映画祭について考え始めていた頃、前から映画祭を応援してくれていた在レバノン邦人の方を通じてメイ・マスリ監督とつながりができ、ぜひ日本でも紹介してほしいという事で今回の上映となりました。幸福な1本でした。

日本初公開となるパレスチナ映画『ラヤルの三千夜』。イスラエルの刑務所で出産した女性の実話をモチーフに、 長年続くパレスチナの理不尽な現実を描いた社会派ドラマ。

『イスラーム映画祭』を当時ゼロから立ち上げたことの魅力やおもしろさ、大変さについて教えてください。

藤本:もともと別の映画祭に5年ほど携わっていたのである程度のノウハウは持っていました。しかし自分で一から各映画の権利元(プロダクションだったり監督本人だったり)と交渉するなど果たしてできるだろうか…と1回目の時は不安でしたが意外とやればできるものです。(笑)

100パーセント一人でリスクを背負って映画祭をやるのは確かにそれなりの勇気と覚悟が必要ですが、しかし1から100まで自分の思いどおりのビジョンを形にし、それに対し多くの方が好意的なリアクションをしてくださるというのは、こんなに楽しい事はない!という感じです。映画祭は自分にとってある種の「社会活動」です。

イスラーム文化を体感するための旅行や食でオススメの国や地域はどこでしょうか。

藤本:ぼくが旅した国の中で今回のラインナップにも入っているのはイランです。イランといえば日本ではアメリカと仲の悪い政治的に怖い国というイメージですが、人々はおおむね賑やかで優しく、みな豊かな文化のもとに生きています。女性たちがまとっているチャードル(服装の名称も様々です)も色とりどりで、異国情緒が味わえる国だと思います。

何よりイランは日本人が思っているよりずっとずっと裕福な国で、テヘランなどの大都市はすさまじく発展しています。そのギャップにも驚くでしょう。

今回上映する『花嫁と角砂糖』はヤズドという町が舞台なのですが、イランの伝統的な家屋が出てくるなど異国情緒満点です。またイランは外食文化がさほど盛んではない代わりに家庭料理が美味しい事で知られ、本作ではそんなイランの家庭料理の見た目の美しさにも圧倒されます。そして内容的にも本作は人の生も死もすべては神しだいという、イスラームの死生観がよく出ている映画だと思います。

珠玉のイラン映画『花嫁と角砂糖』。婚礼の祝いに集まる大家族の悲喜こもごもを描いた群像劇。

藤本さんが好きな映画や思い出に残る映画など教えてください。

藤本:もともと映画の原体験はジャッキー・チェンと、70年代生まれで当時はオカルトブームだったのでホラー映画です。(笑)今でもアクション映画とホラー映画はよく観ます。昨年観て面白かったのは『イップ・マン 継承』と『新感染 ファイナル・エクスプレス』です。

大学生の時は日本のインディペンデント映画やアメリカン・ニューシネマも好きでした。高校の時から世界史が好きで大学も歴史学科だったので、だんだん欧米圏以外の世界中の映画を観るようになり、それがやがて沢木耕太郎さんの『深夜特急』や蔵前仁一さんの旅行記への憧れと相まって、バックパッカーの旅につながるというしだいです。その旅でパキスタンやイランやトルコといったイスラームの国々を訪ねた経験と、昔からアジアや中東の映画を好んで観ていた事がイスラーム映画祭の基礎になっています。

・映画「イップ・マン 継承」公式サイト
・映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』公式サイト

最後に、イスラーム圏の映画をまだ体感したことのない皆さんにひとことお願いします。

「イスラーム」と謳っているぐらいなのでイスラームに興味のある人はもちろんですが、ただ単純に映画が好きな人、旅が好きな人、アラビア語を習っている人、取り上げる映画の国の文化や言語に興味のある人、世界の問題に関心がある人、はたまたインド映画ならとりあえずなんでも観るという人、(笑)とにかくきっかけはなんでも結構ですし、入り口はいくつも用意しているつもりですので、どれか時間の合うものを1本でも観ていただけたらうれしいです。

毎回リピーターの方が大変多く、何本も観ていただけるのは本当にうれしく有り難い限りなのですが、たまたま時間が合ったので観てみたらそれがすごくいい映画だった、というのは何にも替えがたい貴重な映画体験だと思っていますので。まぁそれがあまり面白くない映画だったら申し訳ない限りですけど。そんな時は映画との出逢いも旅と同じく一期一会という事で(笑)。

event info

映画祭名
『イスラーム映画祭3』
概要
『イスラーム映画祭3』は東京、名古屋をへて4月28日(土)~5月4日(金)に神戸・元町映画館で開催!トークセッションも多数行われるこの機会に劇場に足を運んで「異文化“体感”」をしてみてはいかがだろうか。詳しくは『イスラーム映画祭3』公式サイトにて。映画祭公式ガイドブック『映画で旅するイスラーム 知られざる世界へ』も発売中。
公式サイト
http://islamicff.com/

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